無期雇用派遣(常用型派遣)はデメリットしかない!?やめとけ言われる理由とは

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無期雇用派遣に関するイメージ
みなみ
派遣社員が派遣先で働くことができる期間は最大で3年(抵触日)という決まりがありますよね。良い派遣先なら抵触日を気にせずずっと働いていたいし、退職後の待機期間も不安です。そんな悩みを解決できる働き方はないでしょうか?
れいか
派遣会社から「無期雇用派遣」を紹介されたわ。【派遣 × 正社員】みたいな雇用形態で、待機期間もお給料が出るんだって。特に事務経験を積みたい若年層を対象としているみたい。
みなみ
ムキコヨウハケン…?それって紹介予定派遣とは違うのでしょうか。働いていないのにお金がもらえるってどういうことですか?全然分かりません。
酒井先生
無期雇用派遣(=常用型派遣)とは、特定派遣廃止後、2018年問題以降、大手派遣会社が続々と取り入れている制度です。やることは派遣と全く同じで、登録した派遣会社の社員として雇用されるイメージです。紹介予定派遣とは異なります。
みなみ
え!社員になれるなら絶対そっちの方がいいです!つまり、安定して働けるということですね!
酒井先生
よく誤解されるのですが、無期雇用派遣は派遣先の「正社員」になれるわけではありません。また紹介予定派遣のように、直接雇用を前提とした働き方でもありません(原則)。この他にも注意しなければならないことがたくさんあるので、以下の内容は必ず確認するようにして下さい。

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酒井先生
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無期雇用派遣(常用型派遣)とは

無期雇用派遣 一般派遣 正社員
雇用形態 派遣会社と直接雇用 間接雇用 直接雇用
雇用主 派遣会社 派遣会社 勤務先
給与 月給 時給 月給
賞与※ あり 無し あり
雇用期間 無期 有期 無期

※勤務先による(大手派遣会社では原則賞与あり)

無期雇用派遣(常用型派遣)とは、「無期雇用の派遣社員として」派遣会社と雇用契約を結び、登録型派遣社員と同様に派遣先で派遣就業するという働き方です。

特に事務未経験者や若い世代のキャリア形成を支援することが目的です。

常用型派遣との違いはリミットの有無です。常用型派遣は3年間というリミットがあります。

一方で無期雇用派遣は3年間というリミットがないので、期限なく派遣先で働くことができます。

この2つの働き方が「正社員と同等」と表現されることが多い理由は、雇用形態と雇用主以外が全て正社員と同じだからです。

れいか
例えば、これまでアパレル業や飲食業などで正社員として働いていた方が将来に不安を感じて「事務経験を積みたい」と思った場合、未経験から転職を目指すのは非常に難しいわ。でも無期雇用派遣として働けば、たしかに1~2年派遣会社で経験を積む必要があるけど、確実に将来に向けて自分を見直すことができるの。若年層を対象にしているのはこうした理由からよ。
酒井先生
正社員から派遣社員になることは勇気がいることかもしれませんが、現場でキャリアを積むことができる無期雇用派遣は非常に注目を浴びています。実際に派遣先で正社員へ転換、あるいは自信を付けて再転職する事例も増えています。

無期雇用派遣はデメリットしかない?

無期雇用転換に関する誤解(正社員ではない)

無期雇用派遣のメリットはとても魅力的に映りますよね。しかし、派遣の専門家から見ればそのほとんどは労働者として与えられるべき当然の権利であり、冷静に判断すると「メリット…?」と首をかしげるような内容があります。

もちろん、表と裏の関係ですので一概に無期雇用派遣を否定するわけではありませんが、あなたの置かれている立場や今後目指している自分像を見失わなければ問題ありません。覚えておいてほしいことは、「楽だから」「安定だから」といった、派遣会社に“守ってもらう”意識で無期雇用派遣という働き方を選んではいけないということです。

また派遣会社が無期雇用派遣をPRする際、頻繁に「正社員と同等」という表現をします。それなら正社員を目指した方が効率的なはずですし、「無期雇用派遣は正社員ではない・正社員以下である」ことを間接的に表していることにもなります。

酒井先生
ここからが本題になりますが、無期雇用派遣は派遣社員の目線に立って作られたものではなく、派遣会社が有能な派遣社員を抱え込むために作られた背景政治的に派遣法が強行採決された背景があるため、表には見えにくい危険な闇が潜んでいます。

これらは派遣社員の界隈で「無期雇用派遣はやめとけ」なんて言われる要因にも繋がっています。以下でそれらについて紹介していきます。

①正社員ではない=契約を切られる可能性もある

無期雇用派遣は、「無期の契約」ではあるものの正社員ではなく、また「契約解除(=解雇・クビ)」の可能性があります。「派遣切り」とは異なりますが実態は同じです。従って、「無期契約だから安泰!」と怠けるのではなく、高い向上心を持った仕事への取り組みが求められます。(当然ですが…)

しかし、正社員でも通常の派遣社員でもない無期雇用派遣において、そのモチベーションを維持するのは現実的に非常に難しいでしょう。

これがワークライフバランスを保つために「派遣社員」として明確な目的を持って働いている方なら別ですが、新卒派遣や第二新卒として無期雇用派遣に挑戦した20代半ばの方なら年を重ねるごとに「このままでいいのか」「やっぱり正社員になりたい」と不安・ジェラシーを感じる機会が増えるはずです。

もちろん登録型派遣のように派遣先から直接雇用の提案があるかもしれませんが、相当有能な派遣社員でなければ厳しいことが予想されます。というのも、無期雇用派遣社員というのは派遣会社にとっても毎月安定的にマージン(売上)を計算できる“おいしい”人材です。

派遣会社はマージン取り過ぎ!ピンハネ率の計算方法や実態を紹介

2022.05.16

あなたに毎月安定的にお給料が入るということは、派遣会社にとってもそれはメリットとして言い換えることができるのです。その社員を派遣先に手放すということは、派遣会社にとっても正直痛いですし、派遣先もそれなりの紹介料を支払う必要があります。

また「無期雇用派遣から正社員になりました」という例も、まだまだ少ないのが実態です。テンプスタッフのように直接雇用を前提としている無期雇用派遣サービスなら別ですが、そうではない派遣会社、例えばリクルートスタッフィングの担当者から実際にヒアリングして得た情報では(2017年時点)「今後は正社員化を進めていきたい方針」と、実例がまだ無いとはっきり話していました。

現状、無期雇用派遣を申し込む場合、相当な道のりを覚悟する必要があり、そもそもそうした優秀な人材であれば自分で就活をした方が間違いなく早いはずです。

②選考・採用試験がある

無期雇用派遣でも面接・筆記試験がある

無期雇用派遣は、通常の就職活動のように、派遣会社へエントリー後、派遣会社で書類選考面接があります。

簡単な派遣登録とは異なり、パソコン・スマホから基本的な個人情報と、学歴・職歴・資格・自己PR…等を詳細に記入します。書類が通過すれば、面接→最終選考→本採用と進み、実態は就職活動そのものです。採用基準は派遣登録の選考のように甘くなく、社会人経験が無い方や30歳以上の方は選考から弾かれるでしょう。

ここで言いたいことは、なぜ無期雇用派遣に申し込む体力があるのに、実態が全く同じである「正社員への転職活動」をする体力が無いのか?ということです。

「派遣社員になりたい」という方なら、ワークライフバランスの充実や、パートアルバイトの延長、という目的の意図が理解できます。しかし、「無期雇用派遣になりたい」という方の真意はどうも転職活動からの「逃げ」のように見えて仕方ありません。

無期雇用派遣の採用の流れと転職活動との比較

無期雇用派遣から正社員を目指す場合と、転職活動をしてそのまま正社員を目指す場合、無期雇用派遣は実際の「就労」というゴールが保証されない闇でもがく手順が追加されます。

また転職活動なら採用にいくら落ちたとしてもその候補は企業の数だけ可能性がありますが、無期雇用派遣の場合は派遣会社も派遣先もかなり狭く限定されてしまうため、極端に視野が狭くなり、かつ難易度が高いことになります。この事実はあまり語られていません。

③給与が定められている(中々給料が上がらない)

月給として給与が決められているため、どんな仕事内容であっても決められた給与の中で働かなければいけません。自分の希望通りの時給で仕事ができるわけではありませんし、派遣会社主導で職場を転々とする、あるいはあなたが辞めるまでずっと同じ職場で働き続ける必要があります。そうなると派遣としてのメリット・恩恵を受けることが難しくなります。

派遣は経験を最も重視される形態のため、経験さえ積めば時給の交渉も比較的容易です。しかし無期雇用派遣社員として雇われ、月給になってしまえば給与は中々上がらなくなります。

なぜなら同じ職場で同じ業務(事務)をし続ける必要があるからです。言い方は悪いですが、「事務」というのは「誰でもできる仕事(※資格や免許が不要ということ)」。誰でもできるからこそ、「若年層・事務未経験者」でも働き口があるのです。

派遣社員で時給が上がりやすいというのは、「職場を変える」からです。無期雇用派遣は同じ職場で3年以上働き続けられるメリットがありますが、派遣先にとってみれば自社の社員ではないため、積極的に色々な仕事を任せたり、出張や特別な会議に出席させることもありません。あくまで派遣会社から借りてきた人材ですので、給与(派遣料金)の交渉・引き上げは非常に難しいのです。

高収入を目指すには向いていない

冒頭、メリット・デメリットは表と裏の関係であることを解説しましたが、徐々に紐付いてきたと思います。

また派遣会社目線になってみれば理解できますが、無期雇用といえどもあくまで派遣社員です。そんな方に対して年収400万、500万と払うことは考えにくいでしょう。どこかで頭打ちがあり、事務職中心の高額派遣社員を雇用し続けるにも限界が出てくるはずです。

単純に「固定給」だけを望むのであれば、それこそ仕事や勤務地を選ばなければいくらでも正社員の雇用先はあります。「安定」とは、低賃金で浸け置きすることもそう表現できることを忘れてはいけません。

ただ、こうした問題点が徐々に浮き彫りとなってきているため、無期雇用派遣社員にも昇給機会を設け、整備が進んでいる印象があります。つまり、実力を正当に評価し給与で的確に囲い込む施策を行っている派遣会社が増えています。こうすることで他の派遣会社の無期雇用派遣社員としての流出を防ぐこともでき、これは労働者にとっても派遣会社にとっても良い循環になるはずです。

無期雇用派遣に関しては、「どこも同じだろう」と安易に思わず正しく派遣会社の選別も行わないと、自分が損してしまうこともあります。ただ現実的に見てもアルバイトに毛が生えた程度の給料・年収であることがほとんどです(300万円未満)。

酒井先生
繰り返しになりますが、無期雇用派遣というのはハイキャリアを積む、年収400万、500万を目指す、という環境では決してありませんので注意して下さい。

④無期雇用のため就業し続ける必要がある

登録型派遣社員とは異なり、派遣期間終了後、ドラマ「ハケンの品格」のように個人的な休暇を取り長期の旅行に行くことなどはできません。基本、週5日以上の勤務となり、働き方としては派遣社員とは真逆、つまり正社員や契約社員と同じフルタイム勤務です。※3ヶ月ごとの「更新(意思確認)」はあります。

無期雇用として働いているため、派遣先企業が変わってもそこにすぐ順応し、働き続けなければいけません。「人間関係が…」「仕事が合わなくて…」といったわがままは誰も聞いてくれません。月給制で給料を貰っている以上与えられた現場で我慢して働き続けなければいけませんし、派遣先との仲も徐々に深まっていくため「情」が生まれやすくなります。つまり残業も断りづらくなります。

登録型派遣であれば私たちは派遣会社から「お客様」のように扱われることが多かったと思いますが、この無期雇用派遣であれば、完全に派遣会社の駒かつ派遣先においても扱いやすい存在となるので、時には担当営業マンや派遣先から厳しいことを言われたり、我慢して耐えなければいけないことも多いと思います。

言い換えれば、選考過程においてはこうした社会人としての常識・マナー・忍耐力について見られているわけです。

派遣会社ごと・派遣先ごとに契約も異なるため(また非常に細かい)、一般派遣よりも仕事を変えにくい性質もあります。子育てをしながら働きたい、時短勤務で無期雇用派遣をしたい、というのは中々難しいです。

⑤仕事を選べない(職場を転々とする、あるいはずっと同じ職場で浸け置きされる可能性がある)

無期雇用派遣社員は月給制のため、例えば仕事が替わるタイミングの空白の時間(次の派遣先が決まるまでの待機期間)もお給料が貰えてしまいます

しかしそんなことは派遣会社も重々理解しているため、その空白の時間を減らすため、無理矢理にでも新しい仕事を持ってきたり、つなぎの業務を用意します。こちらは安定した給料を「貰ってしまっている」ため、派遣会社にとって使い勝手の良い存在になってしまいます。すると職場を転々とする機会も必然的に増え、コミュニケーションの面や精神的なストレスは蓄積されていくでしょう。

もちろん希望する業務を提出することはできますが、それが毎回通るわけではありません。人手不足の案件や、派遣先の顔を立てる必要もあるため不人気案件に派遣される可能性もあります。

「期間の定めが無くなる」ことが無期雇用派遣の特徴ですが、そもそもその「期間の定め」以上に同じ職場で働くケースはマレで、派遣会社都合で様々な就業先を回されることの方が多い実態があります。

旧常用型派遣(特定派遣)では、これが精神的なストレスとなり辞めてしまう派遣社員が非常に多く、派遣法が改正された今の常用型派遣でも大きく問題となっています。

もちろん同じ職場で働き続けることもできますが、それも派遣先が「あなたを」使い続けたいと思うか、また派遣先が派遣社員を利用することについて会社の意向として継続してくれるかどうかにかかっています。

⑥退職者が非常に多い

具体的なデータがあるわけではありませんが、無期雇用派遣は非常に退職者が多い印象(私の主観)です。当サイトが無期雇用派遣社員として働いている方にアンケートを取ったり、実際に会って話を聞く中で感じたことです。その大きな理由と推測するのが、「若年層」を対象とした制度であるからだと感じています。

将来への不安やモチベーションの維持、派遣先の正社員や同年齢社員との比較で生まれる劣等感。無期雇用派遣であっても、派遣先から見れば「派遣さん」であることに変わりがありません。

ここまでのデメリットを整理すると、

  • 正社員になれるかは派遣先次第
    ※働いて1年以上経つと派遣先が自分を正社員にする気があるか肌で感じるようになる
  • 正社員ではないのにフルタイム勤務、残業も断りにくい
  • 給与が上がりにくい
  • 職種は事務限定
  • 仕事を選べない(職場を転々とするあるいはずっと同じ職場)

ということが挙げられました。例えばこの無期雇用派遣が事務経験者で30代以上やエルダー層を対象にしているなら、定着率は非常に高いはずです。

しかし未来がある若年層にとって、このデメリットは無期雇用派遣のメリットを上回るほどの痛手となるはずです。

最初は未経験の事務に触れ楽しく働くことができると思いますが、正直のところ事務は「誰でもできる仕事」ですから、未経験だろうが経験者だろうが時間が解決してくれる側面も持ちます。そのため正社員ではない立場で、同じ職場で低賃金でフルタイムで働いていれば、当然「自分は一体何をしているのだろう」と自問自答・葛藤するときがやってきます。

派遣先もあなたをほとんど正社員の事務と同じように扱うため、「正社員のあの子と同じ仕事をしているのに、なぜ私の給料の方が低いんだ」と“必ず”思うはずです。これは私が無期雇用派遣で実際に働く方にインタビューして得た情報です。

退職した無期雇用派遣社員の進路は、結果的に自分で転職活動をして正社員になる人がほとんどです。無期雇用派遣として経験を積んだからこそそうした結果になったのだと見れば綺麗ですが、現場を知る人達や実際に無期雇用派遣社員を辞めていった方の意見は後味が悪い印象を持っている方が多いイメージです。

⑦派遣社員としてのメリットがなくなる

「正社員を知らない方」からすると無期雇用派遣のメリットは確かに魅力的に映りますが、「正社員を知っている方」からすれば「メリット」と表現するにはなんだかもどかしい気持ちになります。

都合のいいところだけ派遣の性質を持たせて、いいように社員を使い回す制度。正社員でも派遣社員でもない「中途半端な雇用形態」と言っても過言ではありません。

もちろんケース・バイ・ケース、派遣会社や派遣先、あなたのスキル・経験によって変動することはあります。ただ、こうした側面を頭に入れた状態で無期雇用派遣に申し込むのと、無知な状態で申し込むのとでは全く働き方・取り組み方が異なるはずです。またこれを理解することで、登録型派遣(一般派遣)や紹介予定派遣についても見方がまた変わってくるのではないでしょうか。

『①正社員ではない=契約を切られる可能性もある』内でも解説しましたが、無期雇用派遣社員として就労し続ける最大の壁・困難は、モチベーションの維持です。無期雇用派遣に応募する場合は、明確な目的制度の正確な理解を得た上で行いましょう。

特に今は派遣業界全体が「無期雇用派遣推進」の方向で動いていますので、派遣会社に相談してもその魅力を延々と語られ、あまり実態に関する有益な情報は得られません。事実、無期雇用派遣で働いている社員にインタビューを行った際、「安定」という魅力は感じられるものの、周囲からはどうしても「派遣社員」として見られるため、やはり将来への不安を強く感じるようです。

無期雇用派遣は派遣と正社員の性質を組み合わせた制度であり、「2018年問題」の背景から続々と各社が取り入れています。派遣会社の社員として「入社」するイメージなので期間の定め(抵触日)が無くなる特徴もあります。

無期雇用派遣・常用型派遣・特定派遣
無期雇用派遣と常用型派遣は同義です。正式名称が「常用型派遣」、通称が「無期雇用派遣」です。ここでは「無期雇用派遣」で統一して解説していきます。また「特定派遣」とは、2015年9月30日派遣法改正前における「常用型派遣」のことです(厳密に言うと異なりますが、既に使われない言葉なので覚える必要はありません)。

無期雇用派遣と登録型派遣の違い・比較

無期雇用派遣の登録→就業までの流れ
登録型派遣の流れ

派遣法では「雇用安定措置制度」が設けられており、長期で働く派遣社員に対しては「派遣先に直接雇用を促す」又は「自社で無期雇用として働かせる」ことで、派遣社員を守らなければなりません。

無期雇用派遣制度は後者。つまり、自社で「無期雇用派遣社員」として採用し、自社の社員として派遣先に就業させる方法です。従って、制度自体は派遣法に反しているわけではありません。

また、馴染みのある派遣会社の「派遣登録」ではなく、就職活動のような「選考・採用」という形を取って自社の採用活動(面接や書類選考)を行います。

登録型派遣(通常の派遣)においてはこのような「選考」は派遣法により禁止されていますが、無期雇用派遣についてはそれが可能です(紹介予定派遣も派遣先で直接雇用を前提としているため「選考・採用」を行います)。

無期雇用派遣と紹介予定派遣~正社員を目指すならどっち?

2017.10.03

登録型派遣より年齢や能力を重視される

つまり私たち(無期雇用派遣を目指す方)にとっては、学歴や職歴、資格など、厳しい基準で見られることになります。派遣会社にとっても、社員(無期雇用派遣社員)を抱え大きなリスクを背負うため、無料で人を集める「派遣登録」と違い非常に慎重なのです。

特に、無期雇用派遣は長期的かつ安定的に派遣先に社員を派遣させる目的があるため、「年齢」をまず見られます。各派遣会社によって異なりますし、直接的な表現はしないものの「若年層に向けた事務スキルのキャリア支援」などど、若い人材の募集に力を入れていることが分かります。制度も未整備な会社が多いため、30歳を超えた方の採用は厳しいと言えます。

雇用契約を結ぶタイミングが異なる

雇用形態 雇用主 雇用契約のタイミング
無期雇用派遣 派遣会社 派遣会社の選考に通ったら
登録型派遣 派遣会社 派遣先が決まったら

無期雇用派遣の場合は、派遣会社へ無期雇用派遣の選考・申込を経て採用されればそのタイミングで派遣元(派遣会社)と雇用契約を結びます。派遣先が見つかっていない「待機期間」においても派遣会社と派遣スタッフは雇用関係にあるため給料を得ることができます。

対して登録型派遣の場合は、派遣登録をした段階では法律上の雇用契約は結ばれません。派遣会社が派遣社員へ派遣先をいくつか紹介し、その中から希望の派遣先を見つけ、選考や職場見学等を経て、派遣先と派遣社員が承諾後、初めて雇用契約を結ぶことになります。

またこれは派遣先が変わる都度雇用契約を結ぶことになるため、仮に契約更新が途絶えると、待機期間が生まれてしまいます。

派遣先との直接雇用の可能性は消えてしまう?

「無期雇用派遣になる」ということは、派遣会社とのいわば直接雇用ということになります。そうなると、派遣先で直接雇用の提案を受けたり、その可能性が消滅してしまうことになるのでしょうか?答えは「NO」です。

無期雇用派遣であっても派遣先で直接雇用の可能性はあります。しかし、その方針は派遣会社によって考えが分かれるところです。

例えばテンプスタッフの「ファンタブル」という無期雇用派遣サービスは、直接雇用を推進、つまりどんどん派遣社員を手放していく経営方針です。テンプスタッフではこれを「卒業」と表現しています。しかし、リクルートスタッフィングやアデコなどは、無期雇用派遣の社員を自社で抱え込んでおきたいという方針が強く、積極的に派遣先へ直接雇用の提案をしないことが影で知られています。

無期雇用派遣後のキャリアを自分でよく見据えて派遣会社選びを行う必要があります。

無期雇用派遣を行っている主な派遣会社

派遣会社 認定 サービス名称
リクルートスタッフィング キャリアウィンク
テンプスタッフ ファンタブル
アデコ キャリアシード・ハケン2.5
スタッフサービス ミラエール
マンパワーグループ エムシャイン
マイナビワークス マイナビキャリレーション
エボルバビジネスサポート キャリアキャンパス

※認定は「優良派遣事業者」の認定

2017年4月3日にパーソルテンプスタッフが一般事務の無期雇用派遣サービス「funtable(ファンタブル)」を開始。これによって大手派遣会社全て無期雇用派遣サービスについて参入したことになります。

ファンタブルは派遣最大手の一社であるテンプスタッフが行っている無期雇用派遣サービスなだけあって、利用者からも非常に高い評価を受けています。

【ファンタブル】テンプスタッフの無期雇用派遣の口コミや評判を紹介

2022.05.18

さらに、2018年6月22日にアデコが「ハケン2.5」という、他の派遣会社で2年6ヶ月以上同一の派遣先で勤務実績がある方を対象にした無期雇用派遣をスタート。アデコは「無期雇用派遣を会社としてもっとも注力するサービス」として力を入れていくようです。

アデコの無期雇用派遣キャリアシードの口コミ・評判|ハケン2.5との違いも解説

2022.04.25

このように、派遣業界では優秀な派遣社員の「囲い込み」が進んでいます。

以上の性質から無期雇用派遣は、「安定」だと言われています。それでは以降で具体的なメリットや実態を見ていきましょう。

無期雇用派遣のメリット

無期雇用派遣社員になると、安定収入を得ることができます。なぜなら、「雇用契約を結ぶタイミング」でも解説したように待機期間が生まれない「月給」&「賞与」付きの給与形態だからです。

やることは派遣と全く一緒なのに、未経験ながら正社員と同じような待遇を受けられるのが、この無期雇用派遣の最大の魅力です(わかりやすいように最も一般的な事務の無期雇用派遣に限定して解説します)。

派遣先においても派遣会社が厳選した案件(派遣先)が中心になるため、仕事のやりがいや自身のキャリアアップ、安定した雇用・収入を手に入れることができます。具体的には次のようなメリットを受けることができます。

①時給制から月給制に変更され、ボーナスも支給

派遣社員は時給で給与が支払われていましたが、無期雇用派遣では派遣会社の社員として雇われるため給与が月給になります。各社の募集要項を見ると、月給20~22万円が平均。また通常の派遣ではまず貰うことができなかった賞与も約1ヶ月分(20万円程度)、年に2回支給されます。つまり、年収280万円程度は計算することができます。

派遣社員の仕事は派遣先ありきなので、労働を提供していなければ本来給料を貰うことができませんが、無期雇用派遣社員の場合は月給で給与が決まっているため派遣先の有無に関わらず給料が支給されます。

つまり、紹介される案件が無ければ(景気動向などにより)働いていないのに給料が貰えることも起こり得ます(※派遣会社内における事務作業を頼まれるなど、全く何もしないということはありません)。

また当然ですが、有給も自由に使え、残業代も出ます。不可抗力による電車の遅延、天災等による急な事象についても月給ですから安心です。

②福利厚生が使いやすくなる(負い目を感じにくい)

LINE株式会社の朝食無料サービス

LINE株式会社では朝食が無料。もちろん派遣社員も対象。出典:http://line-hr.jp/archives/39262591.html

無期雇用派遣社員になると、正社員と同様に各社が設けている福利厚生の恩恵を受けることができます。各種手当・フィットネスクラブ割引・ベビーシッター割引サービスといった、派遣社員としては通常付与されないことが多い会社独自の福利厚生や研修も受けられます。

ただ誤解してはいけないのが、社会保険・有給・産休・生理休暇・介護休暇などは福利厚生というより、労働者としての「権利」ですから、これは登録型派遣の派遣社員であっても受けることができます。

確かに用意されていない派遣会社もありますが、大手の派遣会社であればほぼ間違いなく完備されています。たまに「社保完備!育休・産休取れます!」と恥ずかしいことを声高らかに謳っている派遣会社がありますが、これは「他に言うことがありません」と言っているようなものなので注意して下さい。

派遣社員や転職を考える場合に見る「福利厚生」とは、スキルアップ環境や会社の施設、資格手当など、従業員の心と身体の充実・キャリアアップを図るものを指します。

無期雇用派遣の場合はこれらがより「使いやすくなる」といった意味合いです。通常の派遣社員、シフト制の働き方だと中々申請しづらかったり、派遣先の顔色を伺ってしまうことも実態としてはあります。

また一定以上の勤務実績が無いと利用できなかったり、都心に就業する方限定のものも多くあります。その場合、ほとんど派遣先の事務社員と同様の働き方をする無期雇用派遣は気を遣う必要がありません。

③勤務先が都心(23区内)に集中している

東京23区の地図

一般派遣にも言い換えることができますが、全国の派遣のお仕事の約半数近くは東京23区内に集中しています。そして東京に事業所を構える派遣会社で見ると、その約7~8割以上が都心5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)に集中しています。

実際に働くこととなる派遣先も都心5区を中心とした東京23区内になることが多く、区外・郊外への派遣となることはほとんどありません。特に無期雇用派遣の案件は事務職が中心となるため、工業地帯などではなくいわゆる「オフィス街」で働くことが多くなり、仕事が変わる場合も今の住所や派遣先からの距離を考慮してくれるでしょう。

※東京都以外の場合
神奈川県:横浜市内(西区)が中心
埼玉県:さいたま市内(大宮区)が中心
大阪府:大阪市内(中央区・北区)が中心

れいか
現状では東京都内における無期雇用派遣案件が大半を占めています。東京以外でも無期雇用派遣を行っている派遣会社を探すことはできますが、かえって仕事を探しづらくなることもあります。

④交通費が支給される

同一労働同一賃金の開始によって2020年4月より、派遣社員も交通費や各種手当が支給されるケースは多く見られるようになりました。しかし未だに、それらが「給与込み」になっていたり、「一律500円」という意味不明な設定になっている派遣会社もあります。

「給与込み」の場合、それが交通費が課税対象になってしまい、多くの税金が取られてしまいます(交通費を含めた時給であるが故に収入が多いように見えてしまう為)。

しかし無期雇用派遣の場合、正社員と同様に交通費・各種手当や恩恵を受けられるため、働きやすさや手取り収入等の観点で満足度が高くなります。

⑤各種研修制度完備

各社オリジナリティあふれる研修制度を用意しています。「派遣」という特性上、派遣社員の継続的なスキルアップを図らせることは派遣会社の宿命。

また無期雇用派遣社員は派遣会社にとって「看板商品」でなければならないため、事務に必要なパソコンスキルやTOEIC、各種資格講座の割引や無料研修制度が幅広く用意されています。自分自身のキャリアを想定した環境では申し分ありません。

また事務の無期雇用派遣は「未経験者」を対象としているため、研修制度にはかなり力を入れているようです。

⑥派遣先に大手有名企業が多いためスキルアップしやすい

「③」で説明した通り、無期雇用派遣は勤務先が都心5区になることが多く、かつ「若い(かわいい)事務社員が欲しい」と考える派遣先となります。必然的に無期雇用派遣を依頼したい会社は資金力がある大手企業中心となります。

聞いたことがない中小企業や工場勤務になる可能性は低く、多少なりともあなた自身の希望を叶えてくれるため、大手有名企業でスキルが高い社員に囲まれながら事務をすることができます。

やはり社員のレベルが高い環境、動くお金が大きい会社で働くことは、たとえ事務であっても向上心や業務に対する意識は高まります。今後転職や派遣の働き方を変える上でも大きな経験として培われるでしょう。

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無期雇用派遣はやめとけと言われる理由

正社員を目指すなら自分で就職活動した方が早い

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無期雇用派遣は確かに給与の安定を望むことができますが、派遣のメリットである「自由」を失うことになります。

それでいて、就業先では「派遣社員」として扱われるためジェラシーを感じることも多いでしょう。

無期雇用派遣社員は、月給として安定した収入を得たい人には良いように思いますが、それならば正社員として転職を考えた方がかなり現実的ではないでしょうか。

安定給、社会的地位を望むならやはり正社員が最強です。

派遣社員として働いた方が良い場合もある

無期雇用派遣は通常の派遣のように大きく稼ぐこともできませんし、時間を自由に使うこともできません。

「無期雇用派遣」という働き方があることだけ、選択肢として頭に入れておく程度で構わないでしょう。まとめとして最低限覚えておいてほしいのは以下3つです。

  1. 「派遣社員」か「無期雇用派遣」かという2つで揺れている方は、間違いなく派遣社員として働くべき
  2. 正社員を目指している方は転職エージェントや転職サイトに登録した方が早い
  3. 事務の現場経験を積みたいという方だけ無期雇用派遣として働くべき

無期雇用派遣から仮に正社員になれたとしても、最速で半年以上かかります。直接雇用を前提として募集している無期雇用派遣の派遣会社であってもあなたに能力が無ければ永遠に決まりません。

就活に失敗した方で無期雇用派遣を検討している方も、それは妥協でしかありません。正社員になりたいという目的があるなら、少し遠回りをしてでも就職浪人や、あるいは同じ派遣でも紹介予定派遣などその道が用意されている雇用形態を選ぶべきです。

「無期雇用派遣」から「直接雇用」は大丈夫?派遣先から提案された時の注意点

2017.06.01

無期雇用派遣(常用型派遣)から正社員は非現実的

文中でも少し解説しましたが、無期雇用派遣から正社員への転換は今のところおすすめはしづらいです。テンプスタッフのファンタブルのような直接雇用前提の無期雇用派遣サービスなど、ごく一部の大手会社以外の無期雇用派遣は評価に値しないのが正直なところです。

派遣社員は多くの場合初回更新が1ヶ月です。もし自分に合わないというのであれば1ヶ月でやめればいいだけ。しかし「無期雇用派遣が合わなかった」となると、それを「やっぱり辞めたい」と簡単に破棄することはできませんし、「時間」という大切な財産が失われることになります。

仮に無期雇用派遣社員として働き始めれば、派遣社員の中でもエリートであるため鼻高々かもしれませんが、派遣先の方から見たらあなたは「派遣社員」であることに変わりありません。つまり自分がどの立場なのかも分かりづらく、ただストレスを抱えるだけなのでは、と私は危惧しています。

見栄・社会的地位が欲しいのか、安定給が欲しいのか、時間が欲しいのか、自由に働きたいのか。そのどれも無期雇用派遣では中途半端になってしまいます。

無期雇用派遣のデメリットまとめ

ここにまとめたことは私が派遣の営業で働いている中で得た経験や、派遣社員、無期雇用派遣社員として働いてきた方々の特徴や性格を考えて記載しています。

派遣社員と同様に今後は整備が進んでいくと思いますが、実態面における問題が多い中で無期雇用派遣として働き始めれば、あなたの大切な時間が奪われるリスクがあります。

そのため無期雇用派遣でなく通常の派遣社員として働きスキルを磨く、あるいはファンタブルのようなごく一部の信頼できる無期雇用派遣を利用するのがおすすめです。

直接雇用前提の無期雇用派遣サービス「ファンタブル」

テンプスタッフ新宿総合登録センター「新宿マインズタワー」受付

以上のデメリットを解消する無期雇用派遣サービス「ファンタブル」が2017年4月にテンプスタッフから誕生しました。要約すると、事務未経験者を対象にした直接雇用前提の無期雇用派遣サービス。年齢制限はありますが、現実的に見た無期雇用派遣の中で最も利用価値が高い内容になっています。

実際にテンプスタッフに話を伺ったところ、直接雇用の取り組みが始まって3年近く経ちかなり実例が増えてきたそうです。今後はどんどん無期雇用派遣社員を「手放す」=「直接雇用化(正社員化)」取り組みを行っていきたいと話していました。ただ、ファンタブルでもってしても「転職活動をした方が早い」という事実は変わりません。

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