解雇の種類と法律上の扱い
法律で決められている解雇には3種類あります。普通解雇・懲戒解雇・整理解雇です。
冒頭で出てきた不当解雇は労働基準法では違法とされているものです。解雇には客観的で合理的な理由が必要になります。解雇は会社側の一方的な契約破棄にあたるため、もし行う場合は労働契約法16条で社会的に解雇に値するか定められています。
普通解雇
労働者が何らかの形で働くことができない状態になってしまった場合や、働きが不十分であると判断されたときに労働契約を解除することができます。もちろん、その事実を証明するために、解雇に値するかの相当性の検証が必要です。
普通解雇の主な例
- 病による就業が不可能な場合
心身の状態で判断されます。ストレスによる胃腸炎や、うつ病など働くことが困難な状態を指します。また、災害による手足や脳の損傷で以前のように健康で安全に働くことができないときにも理由として挙げられます。 - 勤務不良
労働者には、会社に対して誠実に働く義務があります。遅刻や早退、無断欠勤などが多いことは勤務不良として普通解雇の理由になる可能性が高いです。しかし、会社は労働者を指揮監督する権利がありますので、注意せず放置していた場合は普通解雇として値しない可能性が高くなります。 - 能力不足
これを理由に解雇にすることは極めて難しいです。著しく能力が低いことや、教育や配置転換などをしても向上や改善が難しいと判断した場合にできます。 - 行方不明者の解雇
その名のとおり、雇用している労働者の行方がわからなくなってしまったときのことです。解雇に関しては、本人の承諾を受けることなくできるので解雇することを労働者に通告できればことは足ります。 - 退職の勧奨
解雇と異なり、退職勧奨は労働者に対して退職を促し双方合意のもとで退職させる方法です。もちろん、これに関しては拒否することができますが、自己都合で退職するよりも雇用保険では解雇と扱われて自己都合より有利な給付を受けられます。
以上が普通解雇に当たり、解雇自体に正当性が認められれば会社はその従業員を辞めさせることができます。
懲戒解雇
労働者がその会社の秩序を乱し、社会的にも違法的な行動をとった場合に会社からの制裁として行う解雇です。会社内にもそれぞれ規則が決まっています。社長が決めた規則で、例えば「禁煙」「酒の強要」「女性社員に対する扱い方」など会社独自に決めたものなどもその対象になります。
懲戒解雇までの段階
会社によって決められた就業規則があります。それを破った際の最上級な罰として懲戒解雇があります。
レベル1:始末書
懲戒のレベルとしては低いものです。自分の行った行為を認め書きます。会社内での今後の昇進などに関わってきます。
レベル2:減給・降格
程度によりますが、始末書より扱いは厳しく、一般社員であれば減給、役職持ちであれば降格といった給与面でのカットを意味します。
レベル3:謹慎処分
ここまでくると、自分の職歴に完全にキズがつくレベルです。一定期間の出勤を停止させその間の賃金を払わないことです。
レベル4:諭旨解雇
普通解雇と同じような手続きになる可能性が高いです。懲戒解雇よりは程度が少し低いぐらいですが、解雇という社会的な意味では同じです。
レベル5:懲戒解雇
どんなに長く就業していようが退職金などなく予告期間なしで即時解雇させることです。
懲戒解雇は会社の規則に反する罰として使われる解雇です。そもそも会社に入社する段階で規則に同意して働いているため「契約破棄」の意味合いが強くあります。理不尽な就業規則に同意していないか確認しておくことも必要になる可能性もあります。
整理解雇について
会社の縮小に伴う部署の閉鎖や部署の人員の削減によって行われる解雇です。整理解雇の原因は主に会社都合によるものになります。
整理解雇の例
整理解雇は会社都合での解雇が理由となりますが、その中でも以下の要件を満たす必要があります。
- 人員整理の必要性
会社の経営が悪化によるものです。すぐに倒産するほどではないですが、赤字などが続き従業員を削減しないと今後の経営が危うくなるときに行う解雇です。 - 解雇回避努力義務の履行
経営悪化での解雇は最終手段とされており、それまでに行っておく最低限のことがあります。役員報酬の削減、各種費用の削減、配置転換などです。また、新規雇用の中止、給料の引き下げ、希望退職者募集など、考えられる削減できることを全て行う必要があります。 - 解雇者選定の合理性
解雇社を出す場合は、その方の評価や期待度、その後の解雇者の生活状況などを考慮してその合理性が認められる必要があります。雇用形態等も正社員・パート・アルバイトといった順に決まりがあります。 - 手続きの妥当性
説明のない解雇はトラブルとなります。解雇をするに当たって要件をまとめて労働組合との協議を行い、その納得が得られることで整理解雇として認められます。
整理解雇は解雇の中でも会社都合で行われることがあるため、その後の就職に関わってくる可能性は低いです。ここでの退職は会社都合によりということになります。
不当解雇について
法律に反する解雇のことを意味しており、労働者を意味なく解雇することです。不当解雇は違法行為として法で罰せられます。3種類に当てはまることのない解雇であれば、不当解雇になる可能性があります。会社によっては賃金の請求や場合によっては慰謝料の請求までできます。
法律で労働環境を守る
解雇は「ヒドイ」「あんまりだ」と思う方が多いことはもちろんです。しかし、会社を経営して上で他の労働者を守る必要があります。会社が利益を生み安定した経営をして行くうえでは、解雇という処置も必要なことです。